はじめに
2025年4月の制度改正により、60歳以降の給与設計が企業のコスト管理に直結する重要課題となりました。さらに2026年以降も大きな制度変更が予定されています。今回は、厚生労働省の公式情報に基づき、最新ルールと今後の見通しを見ていきたいと思います。
1. 65歳までの雇用確保義務(2025年4月完全施行済み)
制度の現状
高年齢者雇用安定法により、2025年3月31日をもって経過措置が終了し、全ての企業で希望者全員を65歳まで雇用する措置が完全義務化されました。会社は「定年廃止」「定年引き上げ」「継続雇用制度」のいずれかを選択する必要があります。
重要な確認事項
以前に労使協定で設けていた対象者を限定する基準は廃止されています。就業規則(またはそれに代わる労働条件を定めた書類)を現行法令に適合させる必要があります。
2. 高年齢雇用継続給付の縮小(2025年4月施行済み)
変更内容
厚生労働省によれば、2025年4月1日から、60歳到達日が4月1日以降の方については、高年齢雇用継続給付の支給率が最大10%に変更されました(従来は最大15%)。賃金の低下率が64%以下の場合に最大10%の支給率が適用されます。
影響例
60歳到達時の給与が30万円で、60歳以降の給与が18万円(賃金低下率60%)になった場合の給付額の比較です。
| 項目 | 従来(R7.3.31以前に60歳到達) | 改正後(R7.4.1以降に60歳到達) |
| 60歳以降の賃金(A) | 180,000円 | 180,000円 |
| 賃金低下率に基づく支給率 | 15% | 10% |
| 給付金支給額(A × 支給率) | 27,000円 | 18,000円 |
| 差額(月間収入減) | – | 9,000円の減少 |
この給付金の縮小により、従業員の手取りの減少幅が大きくなります。会社は、従業員の働く意欲維持のためにも、給与水準を見直す必要があります。
対策: 助成金の活用
給付率の引き下げに対応するため、賃金規定を増額改定した事業主への支援策として「高年齢労働者処遇改善促進助成金」が利用できます。中小企業の場合、給付金減少額の3分の2が助成されます。
3. 在職老齢年金制度(2026年4月大幅緩和)
2025年度の基準額
2025年度の在職老齢年金の支給停止調整額は51万円です。給与と年金の合計が51万円を超えると、超過分の半額が年金から減額されます。
2026年4月の改正
令和8年4月から、厚生年金が支給停止となる基準額を月50万円から62万円(2024年度価格)へ引き上げることが決定しました。この改正は、高齢者の働き控えを解消し、働きたい人がより働きやすい仕組みとする観点から行われます。
4. 社会保険適用拡大(2026年10月以降)
2026年10月の改正
2026年10月から、社会保険加入の賃金要件(月額8.8万円以上)が撤廃されます。週20時間以上勤務する従業員(学生を除く)は年収にかかわらず原則全員が社会保険加入対象となります。
2027年10月以降の段階的撤廃
2027年10月1日から企業規模要件(現在51人以上)が段階的に撤廃され、最終的に企業規模にかかわらず適用されることになります。
負担軽減策
助成金も検討するのもいいでしょう。
今すぐ取り組むべきこと
【緊急】2025年12月時点
給付金縮小後の従業員手取り額シミュレーション
助成金活用による賃金引き上げ検討
就業規則の法令適合確認
【準備】2026年以降
在職老齢年金改正を見据えた給与設計見直し(2026年4月)
パート社員の社会保険料負担増シミュレーション(2026年10月)
保険料肩代わり制度・助成金の活用準備
まとめ
制度改正により、60歳以降の雇用は「コストと人材定着に直結する戦略課題」となりました。厚生労働省の公式情報を確認し、助成金を活用しながら、従業員との丁寧な話し合いを通じた給与体系整備が急務です。
【参考】
制度の詳細については、以下の厚生労働省公式ページをご確認ください。
高年齢雇用継続給付について
「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
在職老齢年金制度の見直しについて
社会保険適用拡大について
※本記事は2025年12月時点の情報に基づき、企業経営者の皆様の検討の一助となるよう作成されています。実際の計算や申請にあたっては、必ず最新の法令および厚生労働省の公式資料をご確認ください。
