“距離”が近いからこそ「教える」難しさ
4月も目前に。春という大きな節目を前に、新しいスタッフを迎える準備をされている事業所も多いかと思います。
事業所の規模が小さくなれば、大企業のように「人事部の研修担当」がいるわけではありません。社長ご自身や現場の先輩社員が、日々の業務をこなしながら直接指導することのほうがおおいのではないでしょうか。
また、春に限らず年間を通じて、さまざまな経験や背景を持った方が「新しい仲間」として加わる機会も多いと思います。
これまでの経験も年齢も異なる人に、会社の仕事やルールをどう伝えていくか。教える側として、接し方も含めて手探りになることが多いということをよくお聞きします。
「パワハラと言われるのが怖い…」と悩み
最近、いろんな方のお話をお聴きする中で、みんな悩んでいるんだなと実感する機会が増えました。
「いろいろ教えたいんだけど、ちょっときつく言ったら『パワハラ』だと言われかねへんし不安や…」
「会社が小さいので、社員どうしの距離が近いし、新人さんにどう馴染んでもらうか気を使う」
相手を傷つけないように、また早く会社に馴染んでほしいと一生懸命配慮しようとしているからこその悩みだと思います。
ものの本を読むと、パワハラの定義として「優越的な関係を背景とした言動であって…」となかなか難しい言葉が…。もちろん法律上のルールを知っておくことは大切なんですけどね。
難しく考える前に-ハラスメントの本質は「人権問題」
難しく考える前にふまえていただきたいことがあります。
ハラスメントの本質です。
「相手の尊厳を傷つけるかどうか」という、ひとりの人間としての人権問題。私はここに本質があるのではないかと思っています。
「パワハラと言われるから気を付ける」のは保身。
そうではなく、「目の前の相手をひとりの人間として尊重する」という視点を持つことが、すべてのコミュニケーションの土台になると思います。
お互いを尊重する第一歩、それは「『阿吽(あうん)の呼吸』を手放すこと」ではないかと思うのです。
予防の鍵は「自分の当たり前」を崩すこと
私自身、それなりに年齢は重ねてきたものの、社労士としてはまだまだ駆け出しです。だからこそ、経験を重ねるほどに、自分の中の「当たり前」を崩し、新しい相手に向けて1から言葉を尽くすことが、どれほど根気のいる大変な作業か、身に染みてよくわかるつもりです。
それでも、そのひと手間をかけることが、結果的にハラスメントを防ぐことに繋がるといえます。
そこで、新しい仲間を迎えるにあたり、明日から少しだけ意識してみていただきたい2つのステップをご取り上げてみました。(「おまえこそちゃんとできてるのか?」というパンチの効いたツッコミはしないでくださいね。笑)
明日からできる、ハラスメントを防ぐ「2つのステップ」
① その場の感情に任せて言葉を発しない(まずは一呼吸)
相手が思い通りに動いてくれず、ついイラッとしてしまった時こそ要注意。感情にまかせ発した言葉ほど、相手の尊厳を傷つける「怒り(攻撃)」として伝わってしまいます。これでは「指導」ではありません。まずはグッと一呼吸置いて、冷静さを取り戻すこと。これがハラスメントを防ぐ最大の防波堤になるはずです。
② 「阿吽の呼吸」を手放す、言葉の足し算
感情を落ち着かせたら、次は意識して「言葉を足す」ようにしてみてください。
×「前の会社でもやってたでしょ(常識でしょ)」
〇「うちでは、〇〇という理由でこのやり方にしているよ」と理由を添えて伝える。
×「背中を見て覚えなさい」
〇「この作業は、お客様の〇〇に繋がるから大切にしているんだ」と背景を説明する。
×「わからないことがあったら聞いてね」
(※遠慮して聞けないだけでなく、「そもそも何がわからないのかが自分でもわからない」という状態の方も非常に多いです)
〇「明日の〇時に少し時間を取るから、難しかったこととか、つまずいた所を一緒に確認しよう」と、振り返りのタイミングをこちらから設定し、聞くハードルを下げる。
教える側も、教えられる側も安心できる職場へ
ほんの少しの工夫です。ひと呼吸置いて「言葉を足す」ことが、教わる側にとっての大きな安心材料になるはずです。
新しい環境で教わる側の不安も、時代に合わせて教え方を工夫する教える側の難しさも。
両方の気持ちに寄り添いながら、全員が人として尊重され、安心して気持ちよく働ける職場づくりを、ぜひ一緒に考えていけたら嬉しいです。
春の訪れとともに新しく出会う仲間たちと、素晴らしいスタートが切れますよう心より応援しております!

