似ているようで違う、2つの労働時間の考え方
こんにちは。神戸の社労士、山本純二です。
今回は、「所定労働時間」と「法定労働時間」について取り上げます。
この2つの時間は似たような言葉ですが、法律上の扱いはそれぞれ違うものです。 これらの違いをきちんと確認しておくことは、適切な勤怠管理へむけての第一歩。
まずは3以下のつのポイントをみておきましょう。
【ポイント】
①「会社の定時」と「法律の上限」は別物
会社が決めた時間(所定労働時間)を超えても、法律の上限(法定労働時間/1日8時間)を超えていなければ、法的な割増賃金(1.25倍)は必須ではありません。
② 労働時間の判断基準は「実態」
契約上の時間に関わらず、「会社の指揮命令下に置かれている時間」は労働時間とみなされます。
③ 準備や待機時間も対象になり得る
着替えや掃除なども、「義務付けられている」場合は労働時間に含まれる可能性が高いです。
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1. 「法定労働時間」と「所定労働時間」の違い
労働時間には、大きく分けて2つの基準があります。
• 法定労働時間(法律の基準)
労働基準法で定められた上限です。「1日8時間・週40時間」が原則となります。
• 所定労働時間(会社との約束)
就業規則などで会社ごとに定められた労働時間。法定時間内であれば自由に設定できます。
【残業代への影響】
「割増賃金(1.25倍)」が必要となるのは、原則として「法定労働時間(1日8時間など)」を超えた部分に対してです。 所定労働時間が7時間の会社の場合、1時間残業しても実働8時間(法定内)であれば、法律上は通常の賃金計算で足りるケースがあります(これを「法内残業」と呼びます)。
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2. 「労働基準法上の労働時間」とは?
では、どこからどこまでが労働時間なのでしょうか。
労働時間とは、契約書の記載にかかわらず実態として「使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいうものと考えられています。
「会社の指示で動いており、場所や行動を拘束されている時間」かどうか。判断の分かれ目といえます。
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3. 着替えや掃除はどうなる?
「指揮命令下にあるかどうか」を基準にみてみると、以下のような場合、労働時間と判断される傾向にあります。
• 着替え・制服への着脱 制服着用が義務であり、社内での着替えが指示されている場合。
• 始業前の掃除・朝礼 参加が義務付けられている(不参加だと遅刻や評価に影響する)場合。
• 手待時間(待機時間) 電話番などで席を離れられない、運転手の荷待ち時間など。
まとめ
労働時間の管理においては、「就業規則の記載」だけでなく、「実態として会社の管理下(指揮命令下)にあるか」という視点も大事なポイントです。
長い会社の歴史の中で「慣習として続けてきた」ということもあるかもしれません。
ですが、法律上どうなっているのか確認してみると、案外、思わぬところで食い違いが見つかるかもしれません。
法律で決まっているとはいっても、実際に現場で運用するとなると、どうしてもズレが生じてしまいがちです。 まずは「この時間はどういう扱いなんかな?」と、自社の実態を少し振り返ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。 曖昧なルールをクリアにすることは、会社と従業員、双方の安心につながるはずです。
